なんだか急に春めいてきたな、と思っていたらこちらでは先月、3月の29日から夏時間になりました。この日、夜中の12時が同時に夜中の1時になりました。なれない私にはなんとも不思議な感じ。仕事終わり皆で、夜中のステックタルタルと生牡蠣に舌鼓。おしゃべり。夜中0時に始め、1、2時間…なんともう3時!!なるほど、時が経つのは速いものですが、夏時間になる日はこうも速い!!フランス国内に居てちょっとした時差を体験するのです。
夏時間、ついこの間まで本当に寒かった。なのに気がつくと、最近そういえば夜も8時くらいまで明るい。そういえば、2週間ほど前からいっせいに花が咲き始めた。
そして、巷ではまたヴァカンスに入るらしい。今度のはヴァカンスドゥパック。復活祭のヴァカンスなのです。キリストが亡くなった3日後に復活したことを祝う宗教的な休日で毎年日付が変わります。また、細かくは宗派によっても違うらしい。ややこしいので近くのお菓子屋さんの看板に従うと、今年は4月の12日らしい。町にはウサギや卵をかたどったチョコレートがあふれています。卵は誕生、ウサギは多産の象徴なんですって。日本では犬ですよね。
一般にはキリストの復活にまつわるものだとされていますが、こうも一斉に咲き始めた花や芽吹く木々を見ると、ギリシャ神話の春の女神を思い出します。この女神のおかげで昔々は冬なんかなくて一年中が春だったのだと。
ところがこの女神がさらわれてしまい、地上には春がなくなったと。その後、1年に数ヶ月間だけこの世界に戻ってくることを許された、この女神がいる間は鳥が歌い、花が咲き乱れるのだという神話。わたしには復活祭は春の復活でもあるように思えるのです。
La Foire 春のお祭り??
木々が一気に芽吹き春を実感するこのごろ、アパートの玄関先の芝生はしっかり短く刈られても3日後にはちょっと伸びすぎかな…というところまで復活し、白い小さい花や、タンポポ、クローバーがもこもこと生い茂ります。先日から3日目になる雨で人間がうんざりする一方、彼らはここぞ、とばかりしっかり水を飲み栄養を溜め込み、またお日様が出たら一気に伸びる気なのでしょう。
サンスの歴史は確かローマ時代にさかのぼり、そういった町によくある円形をしている。円形に城壁を築いて町を囲み、敵の侵入を防いだそう。たとえばパリもそう。人口が増えて手狭になってくると、さらにその外側に囲いを作りなおす。そのパリの最初の壁は今でもトゥール・ダルジャンの地下のワインセラーで見ることができる。2mの厚みがあり、昔は町を、今ではワインたちを地上から伝わってくる現代の騒音、揺れから守っている。
さてさてサンスではその壁だったところが散歩道になっている。マロニエの並木の間をどんどん進むとヨンヌ河に出会う。もし船をお持ちならこの河を下っていくとパリに着くでしょう。そう、ヨンヌ河はセーヌ川へと名前を変えるのです。そしてこの散歩道に沿って、公園を抜け、噴水とお花を見ながら歩を進めるとまたもとの場所に戻ってきます。
この散歩道で4月30日から5日間だけ開催されるイベントが、La Foire (ラ・フォアール)といって、中世に起源を発する、商人たちの販売促進のための大市場なのです。サンスでは第二次世界大戦の後、まだ大きなスーパーや、年中開いているお店がなかったころ年に一度の大きな市場で必要なものを買い出していたんですって。散歩道をグルっと一周、すべて屋台が埋め尽くし、それぞれがそれぞれに思うものを売るのだそう。これがブルゴーニュで一番大きな市場だそうで、みんなもう、ソワソワ。
もともとはそう言った市場だけだったのでしょうけど、それに便乗して移動遊園地もやってきて(なんとなくイブ・モンタンの映画ギャルソン!!を思い浮かべます)、こちらは市場が開く前からすでに営業中!!観覧車、絶叫系、回る系などそんなに多くはないのですが、驚いたのは電飾のすごさ…!それとグルグル大きく高く回っている絶叫系アトラクションの真下を通行人が行き来しているのです。なかなか日本では見ない光景…危なっかしいですもんね。違った意味で絶叫してしまいそうです。
この時期は、みんな家族、友人、新しい彼女、彼氏と連れ立ってお菓子を食べたりゲームをしたり楽しそう。そうそう、このゲーム、日本ではゲームセンターでよく見るコインゲームだったり、ユーホーキャッチャーだったり、エアーホッケーだったり。意外とお馴染みのものばかりなのです。なんとなく、図らずも日本にいるような気分になってしまいました。
ご先祖様はどんな人?
フランスは色々な人がいます。日本でももちろん、色々な人はいるけど、フランスでは人種、民族いろいろ、です。
日本みたいな島ではなく、いくつもの国に隣接する大陸に位置し、戦争で減った人口を移民で補い、奴隷制を経験し、いつしか混じりけのないフランス人は一部の貴族を除いてはいなくなったと聞いていたけれど、どれほどのものかは実感なし。周りを見回してみると、髪の毛、肌、目の色だけにとどまらず、面長、丸顔、引き目、アーモンド目、丸目、直毛、猫毛、縮れ毛、足の長い人、短い人本当にいろいろ。
身近なところでうちの彼の家系について質問これが彼のうちの簡単な家系図一番下のMOIと言うのが自分のことなので、すぐ上がお父さん、お母さん。
解説するとお父さんのお母さんがスペイン人。お父さんのお父さんはロシア人のお父さんとフランス人のお母さんとの子供。
お母さん側を見てみよう。お母さんのお母さんはフランス人だけど、お父さんはイタリア人。まとめると彼の血は3/8がフランス人で、1/4がイタリア人。同じく1/4がスペイン人。そして、1/8にロシアの血が入っているんだそうだ。なんともややこしい話。そして、色んな国の人の特徴をちょっとづつとってうまれたのが彼なのだ。
ところで、家族を大切にするフランス人たち。頻繁に家族で食事会をひらく。フランスの母の日は6月の第一週の日曜日。ちなみにお父さんの日は2週目。家族親戚で集まって良いお天気を利用して、お庭でパーティー!!
みんなでプレゼントを持ち寄り楽しい日曜日を過ごしたのでした。さて来週はお父さんの日パーティー。離婚率の本当に高いフランスなので、母の日に一緒に過ごした家族とは別の家族と父の日を祝うことも頻繁にあるそうです…。なるほどねぇ。
Le temps des cerises さくらんぼの実る頃
先日お邪魔したお宅のお庭で。前菜のタブレ(クスクスのサラダのようなもの。クスクスは世界最小のパスタだそうで、セモリナ粉からできている。見た目はまるで粟の様。おいしいからと食べ過ぎるとおなかの中で凄く膨らむ…)を食べ過ぎてデザートを食べられなかった私に、お腹に余裕ができたら食べたらいいよ、と指差す先にさくらんぼのタワワになった木。
日本に桜の木はいっぱいあれど、あまり実が生っている様を見たことがない。感動して、心の中で軽快に鳴り始めるアコーディオンのイントロ。頭の中にはさくらんぼの実る頃がゆっくりとしたメロディーを奏でる。
日本では加藤登紀子さんの歌うのが有名だと思います。どうしてだか5月の歌と思っていたので、6月の終わりに近いこの時期に実るさくらんぼを見ることができてなんだか得をしたような気分に。失恋の悲しみ、恋の儚さを歌ったものだそう。さくらんぼのみずみずしい、ほのかな甘さにピッタリ。かすかな甘みが物足りなくて追いかけてしまいそう。
この季節、忙しさにかまけ、すっかり忘れていたのだけど、実は、6月26日で私がフランスに来てちょうど一年だったのです。流れる季節を必死で追いかけていたら気づかぬうちにとうとう一年たってしまっていた…。なれないことの連続、発見の毎日。本当に、本当にめまぐるしい一年だった。迫ってくる水を飲み込み、すぐに後ろに吐き出すような、魚のような感じ。そして、また水を飲む。この一年の淡さはまさに、このさくらんぼの味。
これからもこうやって続いてゆくのでしょう。場所は変われど、一見同じ様な毎日を送っているようでも毎日は、みずみずしさ、甘酸っぱさを運んでくる。
今のところ、私がフランスで学んだことは、友人、家族の大切さ。どうしてだろう、日本をはるかに離れ、何千キロも旅をして学んだことがこんな基本のキ、だったとは…!!どうやらどうやら、まだまだ学ばなければならない事が山ほどありそう…と思う30歳の初夏なのでした。
Mon trésor わたしの宝物
先日家族がふえました。子猫です。
母は猫が好きで、私の知る内では実家には常に猫がいて、その状態に慣れているもので日本で一人暮らしをしている間も是非縁があれば飼いたいなぁ、とは思っていたのですが、なかなかどうして、これが難しい。一人暮らしといえば大概はマンション、アパートだし、そうなると大家さんの了解が要るだろうし、もちろん隣人に鳴き声や臭いで迷惑をかけるわけにもいかないので、実現せず。
ところがフランスで私の知る人たちのなかでは猫を飼っている人が意外に多くて、壁紙やデコレーションを住む人たちでアレンジするのが普通だから、賃貸といってもそれほど心配がないからかしらと思っていたところでした。(実際日本では柱や壁を汚すのが怖かった!)
さて、知り合いのところで猫が生まれて貰い手を探しているというので、いってみるとなんと20匹もの子猫が重なるようにもごもごと…それじゃあ、何かの縁なのでと一匹引き受けることに。こうして、同居人がふえたのでした。
名前を早速考えなければ…周りの人のリクエストで日本らしい名前を考えることに。最初に思いついたのが“タマ”。それと黒猫なので“クロ”。クロはフランス語で当て字にすると“CLOS”ちょっとした囲われた土地なんかを言うそうで、よくワインの名前にもついてる。シャブリのグラン・クリュにもこの名前のワインがあるし、いいかな…と。まあ、結局はタマになったのですが…(クロは皆さん良くご存知の発音なので面白みがなかったようで…)
日本でタマというと猫の名前ですよね(とにかく犬ではないかな)。深く考えたことはなかったのだけどどういう意味?と聞かれると答えない訳にはいきませんよね。タマ…丸いもの、宝物、美しいもの。なるほど、なるほど、ほかにも広辞苑を引いてみると“美しい女”というものありました。どうも昔から座っている猫を見ると着物姿のたおやかな女性を連想してしまいます。それじゃあ、メスだしちょうどよかったかもなんて納得。どういう意味?と訊かれるたびに、“trésor!”(宝物)と答えるのでした。